相続登記(不動産の名義変更)の基礎知識

相続登記(不動産の名義変更)は、不動産の所在地ごとに決められた管轄の法務局(登記所)に申請しなければなりません。相続登記は、相続税の申告のように期限もなければ義務でもありません。ですから亡くなった方の名義のまま放置されるケースが多く、空き家問題で知られるように社会問題にもなっています。また相続登記の義務化も議論になっているところです。

後述しますが、亡くなった方の名義のまま放置しておくと相続人にとっても大変不利益なことが生じますので、相続が発生した時は、その都度、早めに相続登記をすることをおすすめします。

 

①管轄法務局(登記所)

  • 中野区の不動産の管轄は、東京法務局中野出張所
  • 新宿区の不動産の管轄は、東京法務局新宿出張所
  • 渋谷区・目黒区の不動産の管轄は、東京法務局渋谷出張所
  • 豊島区の不動産の管轄は、東京法務局豊島出張所
  • 杉並区の不動産の管轄は、東京法務局杉並出張所
  • 練馬区の不動産の管轄は、東京法務局練馬出張所
  • 小平市、東村山市、西東京市、清瀬市、東久留米市の不動産の管轄は、東京法務局田無出張所

このように、区や市ごとに管轄が決められているのが一般的です。全国の不動産の管轄については、法務局のホームページなどで調べることができます。

 

②登録免許税

相続登記を申請して不動産の名義を変更する際には、登録免許税という税金がかかります。この金額は不動産の価格(固定資産評価証明書の価格)を基準に決められることになっており、その割合は、不動産価格の0.4%です。

都心部の大きな土地では、数十万~数百万円とかなり高額になる場合もありますので事前に準備しておく必要があります。法務局で販売している収入印紙を購入のうえ、これを登記申請書に貼付して納付することができます。

 

③必要な書類

相続登記には、多くの書類が必要になりますが、相続関係や相続の方式によって添付書類が異なります。特に兄弟姉妹、甥姪なとが相続人になる場合は、戸籍の収集が複雑になってきます。基本的な事例である、相続人を配偶者及び子供と想定した必要書類は下記のとおりです。

 

(1)法定相続の割合による

  • 被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本
  • 被相続人の戸籍の附票又は除住民票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票
  • 固定資産評価証明書

 

(2)遺産分割協議書による

  • 被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍謄本
  • 被相続人の戸籍の附票又は除住民票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産を相続する相続人の住民票
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 固定資産評価証明書

 

(3)遺言書による

  • 被相続人の除籍謄本
  • 被相続人の戸籍の附票又は除住民票
  • 不動産を相続する相続人の戸籍謄本
  • 不動産を相続する相続人の住民票
  • 遺言書(公正証書遺言以外は検認必要)
  • 固定資産評価証明書

 

④相続人自身で相続登記をおこなうための準備

(1)法務局の無料相談 管轄法務局に出向いて無料相談

(2)書類の収集・作成

戸籍謄本 各相続人、被相続人の本籍のある役所
戸籍附票 被相続人の本籍のある役所
住民票 各相続人、被相続人の住所のある役所
遺産分割協議書 法務局の無料相談・購入した書籍を参考など
※遺産分割協議の場合
印鑑証明書 各相続人の住所のある役所
※遺産分割協議の場合
自筆証書遺言の検認 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
※遺言がある場合
固定資産評価証明書 東京都23区は都税事務所 ※税務署とは異なります
登録免許税 登録免許税の額を算出
相続関係説明図の作成 法務局の無料相談・購入した書籍を参考など
登記申請書の作成 法務局の無料相談・購入した書籍を参考など

※役所の書類は、出向くほか郵便でも取得できます

(3)登記申請     
管轄法務局に出向いて申請(郵送も可能)

(4)登記の補正     
申請書や添付書類に不備があった場合は、法務局から連絡が来るので出向いて修正

(5)登記書類受領     
登記完了日に、管轄法務局に出向いて提出した相続関係の書類、登記完了証、登記識別情報通知書(権利証)を受領する

(6)登記の完了確認     
各不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、正しい内容の登記がされていることを確認して完了

 

⑤司法書士に相続登記を任せた場合

(1)法務局の無料相談
  • 不要
(2)書類の収集・作成
  • 職権または委任状ですべて司法書士が収集
  • 遺産分割協議書などすべての書類を司法書士が作成
  • 自筆証書遺言の検認も代行できます
(3)登記申請
  • オンライン申請のため全国対応、法務局に出向く必要なし
(4)登記の補正
  • 万が一の修正もオンラインで対応できます
(5)登記書類受領
  • 全て郵送で受領できますので、法務局に出向く必要なし
(6)登記の完了確認
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、専門家の視点で登記内容をチェックします

  
司法書士に任せると、複雑な書類の収集が確実で漏れもありません。難しい書類の作成も司法書士に任せれば安心です。

また登記申請もオンライン対応なので日本全国どこの不動産でも法務局に出向く必要がありませんので交通費の節約にもなります。最大のメリットは、相続人の方が膨大な労力や時間を費やさずに済むことです。

 

⑥相続登記をせずに不利益になるケース

(1)次の相続が発生して、相続関係が複雑になってしまう

想定していなかった親族が新たに相続人になってしまい、遺産分割協議書を作成するのに想定外の時間や費用がかかってしまう。また、遺産分割協議で話し合いが成立せず、不動産の名義変更が滞ってしまう。

 

(2)抵当権など担保を付けることができない

銀行から住宅リフォーム資金を借りるようとしたが、相続登記未了のため抵当権など担保権を付けることができず、融資を断られてしまう。

 

(3)不動産を売却する際に時間を要してしまう。

不動産を売却して現金を用意しようと思ったが、相続登記未了のため取引が延期となり、換金するまでに時間を要してしまう。

 

⑦未登記建物

相続の発生後、法務局で登記の調査をしたが、あるべきはずの建物の登記が見つからないことがあります。実際に建物に登記が存在しない場合もあるのです。

例えば、建築の際に銀行から建築資金の融資を受けていると当然に銀行の抵当権を付けるので、未登記ということはないのですが、手持ちの現金で建築費用を支払った場合などは、そのタイミングで登記をする必然性がなく未登記のまま放置されることがあるのです。

不動産登記法では、建物を新築した場合や未登記建物を取得した場合、表題登記を申請しなければならないことになっています。未登記建物は、固定資産評価証明書に家屋番号や登記床面積の記載がなく、登記識別情報(権利証)が発行されていません。

※未登記建物がある場合は、建物表題登記に精通している土地家屋調査士をご紹介します。

 

⑧銀行の抵当権(担保権)が残っている場合がある

被相続人がマンションを購入したり、建物を建築した際に銀行からその資金を借り入れていた場合は、これらの不動産には銀行の抵当権など担保権がつけられていたはずです。

既に返済が終わっていたとしても抵当権の登記のみが残ってしまっている場合があります。相続登記をする際は、登記事項証明書(登記簿謄本)などでこの点についても調査確認することを要します。

 

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