(1)次の相続が発生し、相続関係がより複雑になってしまう
被相続人が亡くなった時に相続登記をしなかったために、次の相続が発生して相続関係が複雑になってしまうことがあります。
例えば、自宅を所有していた被相続人である夫が死亡、相続人は、妻・長男・次男でした。この時点では、妻が自宅を相続することに暗黙の了解があり、そのまま妻が住み続け、遺産分割協議書の作成などなんら手続きはしていませんでした。
その後、相続登記をしないまま次男が亡くなり、この相続人が妻・長女・次女だったとします。本来であれば、最初の相続人である妻・長男・次男の協力のみで自宅の名義を妻に変更できていたはずです。
しかし、次男が亡くなってしまったことにより、次男の相続人である妻・長女・次女の協力もなければ自宅の名義を被相続人の妻名義に変更できなくなってしまいます。次男の相続人がすんなり協力してくれれば多少手続きが複雑になるのみで済みます。しかし、自宅を被相続人の妻名義にすることに異議を述べてくると大変なことになってしまいます。
また、相続登記をしないまま複数回の相続が発生してしまい、結果、面識のない親族や連絡先の分からない親族が相続関係に入ってきてしまい、トラブルに発展することも考えられます。
(2)銀行からお金を借りられない
土地、建物、マンションなどが亡くなった人の名義のままであると、銀行の抵当権など担保権を付けることができません。
例えば、耐震補強を考えて建物のリフォーム資金を借りようとしたが、抵当権を付けられないことを理由に断られることも考えられます。このような場合は、必ず相続登記を経なくてはなりませんので早めに手続しておく必要があります。
(3)売却に時間がかかる
被相続人の名義のままとなっている不動産を、相続人が売却するには、相続登記を経る必要があります。被相続人名義のまま売却することはできません。
例えば、売却先も見つかりすぐに換金できると思っていたが、相続登記をしていなかったことで、取引が延期になり必要な現金を用意できないなど不利益になることがあります。
(4)戸籍謄本、住民票などの保管期間
除籍謄本、改正原戸籍、戸籍の除附票、除住民票など過去の古い情報が記載されている書類については、役所での保管期間が決められています。戸籍の除附票と除住民票の保管期間は5年間と大変短くなっています。
被相続人の死亡から年数が経過すると、特に被相続人が転勤などで住所を転々とされていたような場合は、その住所移転経緯を証明することが困難になります。このような場合は、法務局から別の書類を添付するよう求められ、余分な手間がかかってしまいます。
このように相続登記をしないまま放置すると、思わぬ不利益を被り、またはトラブルに発展するなどの恐れがあります。次の世代に迷惑をかけないためにも早めに専門家に相談して手続きしましょう。